偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
「実はさっき、気分が悪くなってしまって。そしたら通りかかった男性に助けられて。」
「えっー!詳しく聞きたい!!」
田中先輩は、興味津々に目をキラキラ輝かせるので、私は観念して、着替えながら、簡単に先程の自分の身に起きたことを話した。
「運命的な出会いかも!」
田中先輩が茶化す。
「いえ、田中先輩が想像してるような感じではないので。」
「でも名刺もらったんでしょ?電話した方がいいって!お礼したいとか何とか言ってさ。」
「いえ、本当にそういう感じではないのでっ。」
「絶対、電話した方がいいって!」
と話していると、ノック無しに更衣室のドアが開き、カーテンがシャッと勢い良く開き、
「いつまで喋ってるの!もうすぐ支店開ける時間よ!」
と志摩先輩が少し怒り気味で言う。
「すいませんっ」
「すいませんっ」
田中先輩と私の声がハモる。
それから二人でそそくさと更衣室を出た。
田中先輩はいつも私のことを気にかけていてくれている。今日も、
「またあいつが来るかもしれないから、私がカウンターに出るよ。事務所で予約の処理と電話対応よろしく」
「はい。田中先輩、ありがとうございます。」