偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~


「実はさっき、気分が悪くなってしまって。そしたら通りかかった男性に助けられて。」

「えっー!詳しく聞きたい!!」

田中先輩は、興味津々に目をキラキラ輝かせるので、私は観念して、着替えながら、簡単に先程の自分の身に起きたことを話した。

「運命的な出会いかも!」

田中先輩が茶化す。

「いえ、田中先輩が想像してるような感じではないので。」

「でも名刺もらったんでしょ?電話した方がいいって!お礼したいとか何とか言ってさ。」

「いえ、本当にそういう感じではないのでっ。」

「絶対、電話した方がいいって!」

と話していると、ノック無しに更衣室のドアが開き、カーテンがシャッと勢い良く開き、

「いつまで喋ってるの!もうすぐ支店開ける時間よ!」

と志摩先輩が少し怒り気味で言う。

「すいませんっ」
「すいませんっ」

田中先輩と私の声がハモる。


それから二人でそそくさと更衣室を出た。


田中先輩はいつも私のことを気にかけていてくれている。今日も、

「またあいつが来るかもしれないから、私がカウンターに出るよ。事務所で予約の処理と電話対応よろしく」

「はい。田中先輩、ありがとうございます。」
< 17 / 107 >

この作品をシェア

pagetop