偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
いつもなら、帰りの女子更衣室は、ダラダラと話をしながらゆっくり着替えるのが定番だが、今日は急いで着替えた。

「えっ?沢ちゃんそんなに急いで、もしかしてデート?」

「違いますっ。友達と待ち合わせしてて。」

「怪しいなぁ。付いてっちゃおうかなぁ。」

とからかわれる。

「お先に失礼します!」

「はい、お疲れ~」

休憩室、事務所を通り抜け、裏口から支店を出る。
時計は18時10分。約束の時間を過ぎてしまっている。7階から急いで階段を下りる。

5階に着くと長椅子にすらりとした長い脚を組み、格好よく財前さんが座っていた。
私は息を切らしながら

「遅れて申し訳ありません。」

と言うと、

「18時に終わると聞いていたから、大丈夫ですよ。」

と笑顔で応えてくれた。

財前さんは続けて

「食事しながら話聞かせてくれる?」

と言ったので、

「はい。」

と応えた。

こんな素敵な人と二人で並んで歩くのは気が引けるので、一歩下がって後を付いていく。
エレベーターの前まで来ると、

「何か食べられない物とかある?」

と聞かれ、

「辛いもの以外なら何でも大丈夫です。」

と答えた。
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