偽婚約者の恋心～恋人のフリが本気で溺愛されています～

ミネラルウォーターとカラトリーが来たタイミングで、

「えーと、まず、どこから話せば…」

と、私から切り出したが、何から話せばいいのか考えあぐねていると、彼は優しい眼差しで

「ゆっくりでいいよ。」

と言ってくれたので、私も落ち着いて今まであったことを説明することが出来た。
話の間も彼は口を挟む事もなく、時々頷いて、私の話を真剣に聞いてくれているのが分かった。

一通り話し終わると、料理が運ばれてきた。
彼は

「風乃さんの話と、今日の彼の態度を考えると、これであきらめるとは思えない。そこで提案なんだけど、このまま婚約者設定を続けてみるのはどうかな？」

「とんでもないっ！私は助かりますが、財前さんはご迷惑じゃ。」

「僕には婚約者も恋人もいないから、迷惑な事なんてないよ。それどころか君の婚約者役が出来るなんて光栄だよ。」

財前さんの言葉に赤くなる。

「えっ？からかうのはやめてください。本気にしますよ。」


「本気に取ってくれて構わないよ。じゃあ決まりだね。」

と言って財前さんはグラスを取り、微笑んだ。