偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
まさか先輩達を差し置いて、私が1番に憧れの場所に行けることになるとは思ってもいなかった。

バーに着くと、

「財前様、いらっしゃいませ。」

と、また顔パスのような状態だった。店内は薄暗く、夜景を満喫出来るよう間接照明が多く使われていた。カウンター席や、ボックス席などがあったが、私達は窓側の夜景が楽しめる2人掛けのペア席に案内された。レストランの夜景も素晴らしかったが、ここでは夜景が大パノラマのようになっていて、一段と美しく見える。私達は、横並びに着席した。少し動くと、肩がぶつかってしまう距離感で、緊張が高まる。
テーブルのキャンドルライトがほのかに揺れている。
バーテンダーにメニューリストを渡された。私は、普段ワインやカクテルなどは飲まないので悩んでいると、財前さんは、

「ここは旬のフルーツを使ったカクテルが人気だよ。」

と教えてくれた。私は、

「じゃあ、それをお願いします。」

と言った。
彼はボトルキープをしているようで、ウイスキーとフルーツカクテルをオーダーした。ピンチョス、チーズやナッツと共にお酒が運ばれてくると、彼と軽く乾杯して、一口飲んだ。

「美味しいです!」

と言うと彼はにっこり微笑んだ。
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