偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
蓮さんは迷うことなく、ショッピングモール内の高級ジュエリーショップに入った。仕事かな?私は、躊躇しながらも後を付いて行く。
店内に入ると、蓮さんに、

「店員と話があるから、好きに見て待ってて。」

と言われ、私はショーケース内の煌びやかな宝石を見て回る。さすが高級ブランド。値段も恐ろしいほど高く、派手な物も多い。そんな宝石の中で、小さなダイヤが3個並んだシンプルな指輪に目が留まった。可愛いと思ったが、そこはやはり高級ブランド物。派手な物よりは安いが、一般市民には高すぎる。私が指輪を見ていると、女性店員近づいてきて、

「こちら、人気なんですよ。試されますか?」

と聞いてきた。

「いえいえ、大丈夫で…」

と言いかけたところで、被せるように

「お願いします。」

と頭の上から蓮さんの声が!

店員は、すぐさまショーケースから指輪を取り出し、私の指に。

「サイズもピッタリですね!とってもよくお似合いです!」

誰にでもそうやって言いますよね。こんなお高い指輪無理無理。
私は、

「ありがとうございます。でも、私には…」

と言って指輪を店員に返そうとすると、

「これ下さい。」

と蓮さんが!

「えっ?何を言ってるんですか?」

と、言うと

「婚約者には婚約指輪を買うものだろう?」

と笑顔で言う。私は、慌てて店員に聞こえないように、蓮さんの肘の辺りのスーツを引っ張る。

「ん?」

察してくれたようで、少し屈んでくれた蓮さんの耳元に、私は小声で

「だとしても、ここは高すぎます!」
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