偽婚約者の恋心～恋人のフリが本気で溺愛されています～

「値段のことは気にしなくていい。俺が君に着けてて欲しいんだ。」

とさらっと言ってのける。顔が近いところにある上に、その言葉にキュンとなり私は真っ赤になりうつむく。

どうして蓮さんは、婚約者のフリなのに、こういうドキッとするようなことを平気で言うんだろう…。

店員は指輪をシルク布で拭き綺麗なジュエリーボックスへ。
私がその様子に戸惑っていると、

「すぐ着けるので。」

と言いながら、蓮さんが店員にブラックカードを渡した。

おお！ブラックカードなんて初めて見た！


蓮さんが店員から指輪を受け取る。指輪は、蓮さんの長い指先から、私の左手薬指に、そっとはめられた。

「よく似合ってる」

と蓮さんが微笑む。また胸がキュンとなる。完全に蓮さんのペースにはまってしまったが、お芝居だと分かっていても、とてもうれしくて自分でも赤面しているのが分かる。

結局、店内でしつこく断るのも失礼になると思い、素直に従った。店を出てから

「こんな高価な物、本来なら頂くわけにはいかないのに。申し訳ありません。」