偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
お昼の少し前だったので、人気店だが並ばずに入れた。

藤原さんのことはすっかり忘れ、話が弾んだ。
食後のドルチェとコーヒーが運ばれてきた。

傍から見れば恋人同士に見えるのだろうか。
コーヒーカップに手を添えながらふと考える。

蓮さんが小声で

「店を出た後、また手を繋いで歩いてもいいかな?」

「えっ?」

「向こうの奥に座ってる二人、探偵かもしれない。」

「分かりました。その前にちょっと失礼します。」

私は、化粧直しの為に席を立ち、探偵かもと教えられた二人をチラ見しながら化粧室へ向かった。

化粧室で口紅を直しながら考える。さっきのうちの一人、見たことあるかも…どこで見たんだっけ?
どこで見た?どこ?思い出せっ私!

うーん思い出せないっ。

とりあえず戻らなきゃ。

席に戻ると、既に蓮さんがお会計を済ませてしまっていた。

しまった…。

「おいくらでしたか?」

財布を出しながら蓮さんに聞くと、
財布を持った手をそっと押し返され、

「いいから。」

と微笑まれた。

「すいません。ありがとうございます。」

ああ、また奢られてしまった。助けてもらった上に奢ってもらってばかりで、何も返せてない・・・。
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