偽婚約者の恋心～恋人のフリが本気で溺愛されています～

店を出ると、先程宣言した通り、蓮さんの大きな手が、私の手を優しく包んだかと思うと、すうっーと内側に滑らせ、そっと手を繋いだ。
私の鼓動が早くなる。手の繋ぎ方も慣れている。ちょっとしたことなのに、いちいちドキドキしてしまう。こんな状態で、今日一日
私の心臓は持つのだろうか…。

二人で駐車場に向かって歩いていると、

ヴーヴーヴー

蓮さんの携帯が鳴る。

「私のことは気になさらずに、どうぞ出てください。」

蓮さんは申し訳なさそうに
「ちょっと失礼」
と言って電話に出ると
「もしもし…あぁ、その件に関しては・・・」

携帯で話してるだけでも格好いい。なんでこんな素敵な人が私の婚約者のフリなんてしてくれているんだろう？不思議極まりない。

「すまない。ちょっと緊急の案件が入ってしまって。とりあえず送るから乗って。」

「いえ！ここで大丈夫です。お仕事行って下さい。」

「いいから、乗って。君を送り届ける時間はあるから。」

「はい…。」