偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
落ち着け、私!ちょっと落ち着こう!
服や下着を目の当たりにすると、男の人の家に泊まるということが急に生々しく感じた。
こんなこと、初めてのシチュエーションだ。
大丈夫!蓮さんは私に同情して家に泊めてくれるだけ。蓮さんは紳士だから、私に何かするなんてあり得ない。何もされないし、何も起こらない。そんな考え、逆に蓮さんに失礼だ。
私はそう言い聞かせると、
自分を落ち着かせる為にお茶を入れ、ソファで寛ぐ。といっても、寛げるわけがない。ソファから立ち上がり、大きな窓から外の景色を眺める。
外の景色もすばらしかった。

このマンションの部屋も最上階。

ベリーヒルズビレッジが一望出来る。

蓮さんって、私が思っている以上にすごい人かもしれない。たしか、ベリーヒルズのレジデンスの最上階に住む人はすごい資産家だとかいう噂も聞いたことがある。
そんな人が本気で一般市民の私を相手にするわけがない。こういう人はきっと、どこかの資産家のご令嬢が許嫁だったり、付き合う人も人気女優とか、人気モデルとか、スタイルも良くて美人でっていうのがお決まりだろう。
自分とは住む世界が違うと、手の届かない人だと、改めて目の当たりにし、落ち込む。

ブルーな気持ちで外の景色を眺めていると、
はっ!思い出した!イタリアンレストランで見た人、朝の通勤電車の同じ車両で何度も見かけたことがある。ということは、かなり前から探偵を使っていたんだわ。家を知られていたのにも納得がいく。
怖い・・・。マンションの前に立っていた藤原さんを思い出し恐怖が蘇る。

ピンポーン

インターホンが鳴る。

画面を見ると先程と同じ女性だ。

早い!さすが!

私は玄関の扉を開け、袋に入った食材を受け取る。

「ありがとうございました。代金は?」

「月末に、一括で管理費と一緒に引き落としさせて頂く形になっておりますので。」

「そうなんですね。失礼しました。」
< 58 / 107 >

この作品をシェア

pagetop