偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
眠れない…。
蓮さんが横にいると思うと全く眠れない…。

しばらくすると

「風乃、起きてる?」

「はっ、はい…。」

「精神的にも、大変な事が続いてるからなぁ。眠れないよな。」

いえいえ、あなたと同じベッドにいるから眠れないんですよ、と思った。自分から同じベッドでと言っておきながら、私は今夜、緊張で眠れそうにない。

「いえ、大丈夫です。蓮さんのおかげで安心して眠れます。感謝しています。」

暗闇の中、蓮さんが優しい声で、

「俺は風乃を守るし、風乃の安らげる場所になりたい」

「ありがとうございます…。」

「もう少し側に行ってもいい?」

「えっ?はっはい。」

彼の肩が近づく。
心臓のドキドキが早くなる。
シーンと静まり返った暗闇の中、私のうるさい心音が聞こえてしまわないかと焦る。

しばらくすると、また蓮さんが口を開いた。

「手を繋いでもいい?」

「ええっ??どうしてですか??」

「手を繋ぎたいから。ダメかな?」

「いえ、大丈夫です…。」

布団の中で、彼の大きな手が私の緊張で強ばった手に優しく重なる。
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