偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
「沢ちゃん、大丈夫だった?」

と、田中先輩と志摩先輩がカウンターに出て来た。

「それが…話があるそうで、仕事が終わったらここに来るようにとメモを渡されました。行かないと他社に乗り換えるって…」

私はそう言って先輩達にメモを見せると、田中先輩は、

「ほんとに、最低な男よね。ここの売り上げの3割は藤原コーポレーションだからなぁ。でもずっとこの状態が続くのもよくないから、ちゃんと話して諦めて貰った方がいいよ。私も一緒に行くから。ついでに脅迫対策で音声も録音しちゃおう。」

「田中先輩、ありがとうございます。心強いです。」

すると志摩先輩が、

「ちょっと待ちなさいよ!二人とも!危ないって!ここは、ちゃんと課長に報告して、相談した方がいいって。」

と、止めに入る。

「大丈夫ですって。志摩先輩、心配し過ぎ。じゃあ一応、私の方から課長には伝えときますんで。」

と、田中先輩は志摩先輩をあしらう。
志摩先輩は田中先輩の言葉に溜め息をつき、

「沢ちゃんも、一人で抱え込まないで頼ってくれていいから。ホテルの部屋に呼び出すって、ヤバいよ。絶対行っちゃダメだよ。」

と、私を諭す。私はその場をやり過ごす為に、

「分かりました。」

と答えた。でも、私と田中先輩は気が変わることはなく、二人で行くつもりで、顔を見合わせた。
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