偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
私は歩きながら、短かかったが、偽婚約者として蓮さんと過ごした日々を思い返していた。
蓮さんの一挙一動がすべて素敵すぎて思い返せば好きになっている自分を確信する。
でも向こうには私に対しての思いはない。あの夜私を抱きしめてくれたのも、きっと不安になっていた私を慰める為。私はあの抱擁で、さらに蓮さんの事が好きになってしまった。
今日、これで藤原さんの件が解決すれば、蓮さんに指輪を返して、終わり。知り合う前の他人に戻るだけ。二度と会うこともないだろう。
そう思うと胸がズキッと痛んだ。もともと出会うはずもない雲の上の人。これでいいんだ。

と、私は自分に言い聞かせた。

二人で終始無言でホテルに向かう。

ホテルに着いた。

私達は、フロントを素通りし、直接ホテルの客室エレベーターへ。

エレベーターの中に入り、カードキーをかざし50階のボタンを押す。



ポーン

50階に着いた。

私達はエレベーターのドアが開くと、重い足取りで進む。

緊張の面持ちで、長い廊下を無言で歩き、

指示された505号室の前に着いた。

足が震える。

田中先輩が口を開いた。

「沢ちゃん、大丈夫?」

「はい…。大丈夫です。」

さらに緊張が高まる。私は、人差し指を伸ばし、ゆっくりとベルを押した。
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