偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
救出
藤原さんの胸に飛び込む形なった私は必死で抵抗し、逃げようと藤原さんの腕を振りほどこうとしたが、鼻と口元を覆うように布を当てられた。

「暴れる君が悪いんだよ。」

そう言ったのが遠くに聞こえると、そのまま瞼が重くなり、気を失った。



どれくらい時間が経ったかのか分からない。身体が重い。ゆっくりと目を開けると身動きが取れない。ベッドの上に寝かせられており、口にはガムテープが貼られていた。拘束はされていないが、おそらく先程嗅がされた薬品のせいであろう、身体が動かない。

藤原さんは私が目を開けたことに気づくと、私の頭を撫でながら

「なかなか目を覚まさないから心配したよ。分量間違えたと思って焦ったよ。」

「んーっ!!!」

私は必死で叫ぶが、ガムテープで口を塞がれ、声が出せない。
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