偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
「はい。どうぞ。」
と言うと、ドアが開けられ蓮さんが入ってきた。
蓮さんは私を見るなり、
「もう起きて大丈夫なんですかっ?!」
と、少し慌てながら私の側に駆け寄る。
「はい。すっかり。色々とご迷惑をおかけしました。」
と言って、私は頭を下げる。
「風乃、顔を上げて。」
と言って蓮さんは、私の両腕をサイドからそっと支える。
顔を上げると蓮さんに、見つめられ、耐えきれず目を反らす。
「素敵な庭園ですね。」
私は誤魔化すように話を変える。
「普段はお茶会やお見合い、たまに海外からの要人の接待で使われているんだ。」
「素敵な場所ですね。」
「検査結果に問題がなければ、明日退院出来るらしいから、その足で案内するよ。」
「えっ?いいんですか?」
「もちろん」
いつもの蓮さんの優しい微笑み。しかし、すぐに真剣な眼差しで、私を見つめ、
「風乃、俺が怖い?」
「いえ、怖くないです。」
「風乃、抱きしめてもいい?」
と、私に聞いてきた。私がゆっくりと頷くと、
蓮さんは私をギュッと抱きしめた。
「無事でよかった。」
私はゆっくりと蓮さんの背中に腕を回した。