嘘吐きな王子様は苦くて甘い
スカートが濡れないように気を付けながら、私はゆっくりと寄ってきた波に足をつけた。
「わ、冷たいっ」
カンカン照りじゃないからか、海の水は少し冷たい。だけどすぐに慣れて、久しぶりの感覚が凄く気持ちいいと感じる。
お風呂やプールとは違う、ちょっとシュワシュワしてて不思議な感じ。昔から、こうやって海に足をつけるのが大好きだった。
「気持ちいいーっ」
いつの間にか夢中でパシャパシャ、両手ですくっては指の間から海水を下に落とすって遊びをしばらく続ける。
「フッ」
小さな声が聞こえてパッとそっちを向くと、手の甲で口を押さえるようにして旭君が私を見て笑ってて。
久しぶりに見たその笑顔に、海で夢中で遊んだことなんて一瞬で頭から消え去った。
好きだ。
やっぱり私、旭君のことが大好きだ。
「子供かよ、どんだけはしゃいでんだ」
「だ、だって久しぶりで」
「はいはい、楽しーんだな」
「楽しいよ!」
「そりゃーよかった」
もう笑顔は消えてたけど、旭君の表情は柔らかくて。私は足の先を水面に滑らせながら、旭君の方は見ずに聞いた。
「何で今日、ここに連れてきてくれたの?」
「お前好きだろ?」
「好きだけど、そういうことじゃなくて」
「…別に。ただ気が向いたからってだけ」
「…そっか」
嘘だ。旭君、最近私が元気ないって気付いてる。それを自分のせいだと思ってるのかどうかは分からないけど、旭君が私をここに連れてきてくれたのが気紛れなんかじゃないことだけは分かってる。
旭君はいつも、天邪鬼で嘘吐きだ。
なぜか溢れそうになる涙に気付かれないようにグイッと乱暴に手の甲で目を拭うと、私は笑顔で旭君を見た。
「ねぇ、旭君も入ろ?足だけ」
「おー」
「気持ちいいでしょ?」
「きたねぇ」
「こんなもんだよ」
「ほらこれやる」
「え?キャッ、何!?海藻!?」
「ブッ、アハハ」
「もー、ちょっとぉ!」
「ホントどんくせぇなお前」
旭君、大好きだよ。
だから私、このままじゃいられない。
偽物の彼女のまま、側には居られないよ。
「わ、冷たいっ」
カンカン照りじゃないからか、海の水は少し冷たい。だけどすぐに慣れて、久しぶりの感覚が凄く気持ちいいと感じる。
お風呂やプールとは違う、ちょっとシュワシュワしてて不思議な感じ。昔から、こうやって海に足をつけるのが大好きだった。
「気持ちいいーっ」
いつの間にか夢中でパシャパシャ、両手ですくっては指の間から海水を下に落とすって遊びをしばらく続ける。
「フッ」
小さな声が聞こえてパッとそっちを向くと、手の甲で口を押さえるようにして旭君が私を見て笑ってて。
久しぶりに見たその笑顔に、海で夢中で遊んだことなんて一瞬で頭から消え去った。
好きだ。
やっぱり私、旭君のことが大好きだ。
「子供かよ、どんだけはしゃいでんだ」
「だ、だって久しぶりで」
「はいはい、楽しーんだな」
「楽しいよ!」
「そりゃーよかった」
もう笑顔は消えてたけど、旭君の表情は柔らかくて。私は足の先を水面に滑らせながら、旭君の方は見ずに聞いた。
「何で今日、ここに連れてきてくれたの?」
「お前好きだろ?」
「好きだけど、そういうことじゃなくて」
「…別に。ただ気が向いたからってだけ」
「…そっか」
嘘だ。旭君、最近私が元気ないって気付いてる。それを自分のせいだと思ってるのかどうかは分からないけど、旭君が私をここに連れてきてくれたのが気紛れなんかじゃないことだけは分かってる。
旭君はいつも、天邪鬼で嘘吐きだ。
なぜか溢れそうになる涙に気付かれないようにグイッと乱暴に手の甲で目を拭うと、私は笑顔で旭君を見た。
「ねぇ、旭君も入ろ?足だけ」
「おー」
「気持ちいいでしょ?」
「きたねぇ」
「こんなもんだよ」
「ほらこれやる」
「え?キャッ、何!?海藻!?」
「ブッ、アハハ」
「もー、ちょっとぉ!」
「ホントどんくせぇなお前」
旭君、大好きだよ。
だから私、このままじゃいられない。
偽物の彼女のまま、側には居られないよ。