嘘吐きな王子様は苦くて甘い

深く息を吸い込んで、胸いっぱいに溜め込む。今だけ、今だけ恥ずかしさを捨てなくちゃ。

「暑いねー、今日」

「あー」

「喉乾いちゃった！お茶が飲みたいなー、なんて…」

「…」

「ダメ？」

「待ってろ」

ベッドから立ち上がると、旭君は部屋を出ていく。私はふぅっと短い溜息を吐いた。

「ほら」

旭君が持ってきてくれた氷入りのグラスに入った麦茶。

「あ、やっぱり炭酸がいいなぁ？」

「は？」

「ダメ？」

「めんどくせぇからそれ飲んどけ」

「炭酸がいいの！炭酸じゃなきゃヤダ！」

「なんなんだ一体…」

呆れたように言いながらも、旭君は自分が持ってきたお茶を一気に飲み干して、空のグラスを持ってまた部屋を出ていった。

恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいになって、思わずその場にへたり込む。

…ごめんね、旭君。大倉ひまりは、悪い女になります。旭君が罪悪感感じなくなる位嫌な女の子になって、ちゃんとフッてもらう為に。








「ほら」

旭君は律儀にペットボトルの炭酸を持ってきてくれる。

「ありがとう」

流石にもう一回ワガママ言う勇気はないので素直に受け取ろうとしたら、旭君が先にキャップを少し開けてそれから渡してくれて胸がキュンとした。

「ったく」

「ぷはぁー、美味しい」

色んな気持ちが混ざってるから、つい一気飲みしてしまう。

「つか、何しにきたの？」

「宿題、一緒にやろうと思って」

「は？」

「ダメ？」

「…別にいいけど。どっか他行こ」

「え、何で？」

キョトンとした顔をする私に、旭君が少し苦い顔をする。

「いいから、部屋出るぞ」

「や、やだ！」

「は？」

「今日はここがいいの！お願い！」

「意味わかんねぇ」

外じゃ、今からやろうとしてる私の計画が実行できないから！

「どうしてもダメ？」

「…いーけど、別に」

「へへ、ありがとう」

旭君は諦めたように、ガシガシと頭をかいてそれ以上は何も言わなかった。