嘘吐きな王子様は苦くて甘い
私はローテーブル、旭君はシステムデスクにそれぞれ宿題を広げる。

無言のままやり始めて約十分。私の目的はもちろん宿題じゃないから、次の行動を起こさなきゃいけない。

…大丈夫かな。できるかな。最近は家族の前でだって、しちゃったら恥ずかしくなる位なのに。

旭君にバレないように、私はお腹をさすった。

女の子が、付き合ってあまり経ってない彼氏の前で《《おなら》》する。これ以上の幻滅ポイントってないよね、多分。

「…」

頑張れ、私のお腹。緊張とこれから襲ってくるだろう死ぬほどの恥ずかしさを考えたら、中々腸が活性化してくれない。

旭君の前でおならなんて絶対したくない。でも、自然に幻滅されるにはこの方法が一番だと思うし。

…よし。覚悟を決めよう。決意固めてここに来たんだから、恥ずかしがってちゃダメだ!

私は固く目を瞑ってギュッとお腹に力を入れた。

お願い、どうか絶対、臭くはありませんように…!









グエエェッ

「…」

「…」

おならの代わりに、変な音のゲップが出てしまった。思わずパッと口元を押さえる。

も、もう…最悪だ!い、いや別にいいんだけど!だっておならしようとしてた訳だしゲップ位どうってこと…でも今すぐ部屋飛び出したい…

カエルみたいな音出ちゃったし…死んじゃいそう…うぅ…

「ククッ」

堪えるような笑い声が聞こえて、恐る恐る旭君の方を見る。いまだに口を抑えたままの私とパチッと目が合うと、旭君は隠すのをやめて思いっきり笑った。

「アハハッ、お前なんなんだよ」

「も、もう!笑わないでよ!」

「カエルかよ…ハハッ」

「バ、バカッ!聞こえないフリしてよっ!」

「無理だろ…ククッ」

「も、もうーっ!」

多分真っ赤だろう顔を隠すのも忘れて、私は立ち上がって旭君の肩をポカポカ叩く。

旭君はよっぽどおかしかったみたいで、私の顔を見ては暫く笑ってた。

くそぅ、こんな時ですら笑った顔が見れて嬉しいなんて…私はなんてバカなんだ!

やらかしたって意味では一応成功したような気もしなくはないけど、結局幻滅されたのかは分からずじまいに終わった。

…嫌だなぁ、されてたら。

ていうか、出なくて良かったぁ。
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