嘘吐きな王子様は苦くて甘い
それから十分位は頑張ったけど、とうとう限界がきてしまった私。いそいそと宿題を片付けてシュンとしながら旭君に「帰るね」と伝えた。

「宿題進んだんか?」

「全然」

「なのに帰んの?」

「だって…え、えーっと、私宿題なんてギリギリに友達に見せてもらうズルいヤツだから!自分の力でなんかやったことないから!」

「ふぅん」

「最低でしょ!私!」

「俺もそうだし」

「え!」

「自分でやったことなんか一回もねぇよ。気弱そうなヤツの宿題ぶんどって丸写し」

「う、嘘だ!旭君は素直じゃないけど、そんなことする人じゃないもん!」

必死になって反論する私を見て、旭君はまた笑う。ちょっとマシになった恥ずかしさがまた一気にこみ上げてきた。

「一緒」

「え?一緒?」

「俺もそう思ってるってことだよ」

「あ…」

旭君も、私をそんなヤツじゃないって思ってくれてるってこと?

「どっか他んとこで続きしに行くか?」

「う、ううん!また来るから!」

「また来んのかよ」

「来るもん!」

「次は炭酸くれとか言うなよ」

ニヤッと笑いながら言うから、私はまた旭君の肩をポカッと叩いた。






…こんなの、ずるいよ旭君。

教室であんなこと言ってたくせに、偽物の彼女になってから今までよりも少しだけど素直に色んな表情を見せてくれてる気がして。

笑顔も、気遣いも、いたずらっぽい顔も。

目の裏に焼き付いて離れてくれない。もっと隣で、見ていたいって欲張りになってしまう。

旭君はきっと、早く私と別れたいって思ってるはずなのに。

旭君も酷いけど、自分勝手は私も一緒なのかもしれないなぁ…

とっくに中に入ってしまった旭君の家の玄関を見つめながら、私はまだ込み上げそうになる涙を乱暴に拭った。
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