嘘吐きな王子様は苦くて甘い
ーー

八月に突入して、もう一週間が経つ。夏休みも始まってしまえばあっという間だなぁ。

「やっほー!ひまり」

「ひま」

「風夏ちゃん!菫ちゃん!」

待ち合わせ場所へ駆け寄ると、二人とも笑顔で迎えてくれた。

「ごめん、遅れちゃった?」

「んーん、私らも今きたとこ」

「あっついねぇ、マジで」

夏休みに入ってからもう何回も遊んでるのに、会う度に久しぶりみたいな感覚になってしまうから不思議だ。

「今日スカート欲しいんだよねー、ロングの」

「まだセールやってんじゃない?」

「可愛いの見つかるといいねぇ」

今日は三人で大型ショッピングモールにやってきた。ウインドウショッピングして、美味しいもの食べて、モールのすぐ横にあるカラオケにも行く予定だ。

「ひま、石原とは会ってんの?」

二人には、あの放課後の盗み聞き事件は話してない。このこと話しちゃったら、流石に旭君が最低男子のレッテルを貼られてしまうから。

客観的に見ると旭君は酷いヤツだし、フラれようとしてる私はバカでしかないんだろうけど。

それでもいいって、自分自身が決めたからこれでいいんだ。

「何回かは会ったかな?」

「上手くいってるんだね、よかったじゃん!」

「アハハ、どうかな?」

嘘を吐くのが上手くなっちゃった、悲しい…









「石原さん?」

三人でキャイキャイしながら楽しんでたら、不意に後ろから大きめの声で名前を呼ばれた。

振り向くと、笑顔の一ノ宮君がヒラヒラ手を振っている。

「やっぱ石原さんだ」

タタっとかけてきた彼と、その後ろに一緒に来てるらしいお友達さんが二人。見たことあるような気はするけど、名前は浮かんでこない。

「遠藤さんと小浜さんも!」

「何で私らオマケ扱いなんだよ、一ノ宮このっ」

「そんなんじゃないって!たまたま石原さんが目に入ったんだよ」

風夏ちゃんの肘打ちを笑顔で受けながす一ノ宮君は、今日も爽やか男子。私服だと、またいつもとは違った感じがする。

「何か新鮮な感じすんね、私服」

「今私も同じこと思ってた!」

笑いながら言うと、一ノ宮君も同じように笑顔を返してくれた。

「てかいいの?友達放置で」

「あ、忘れてた!こいつら一組で、サッカー部一緒なんだ」

「どーもー、ミヤがいつもお世話になってまーす」

「なんだその挨拶っ」

「私ら皆同じクラスでーす。私、小浜って言います」

「遠藤です」

「石原です」

一ノ宮君の友達二人は私の顔を見るなり、二人で顔を見合わせる。

でもすぐにニコッと笑顔になったから、私の気のせいだったのかもしれない。

「じゃ、私達行くから」

「あ、うん。ごめんね引き留めて」

「また学校でね、一ノ宮君」

「石原さん、またね!」

「ばいばーい」

軽く手を振って、一ノ宮君達と別れる。隣を歩く菫ちゃんを見ると、なぜか難しそうな顔をしてた。
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