嘘吐きな王子様は苦くて甘い
「でも石原君、マジで最低だね!」
ひとしきり泣いて、それからはマシンガントーク。風夏ちゃんはずっと、私を庇ってくれた。
「私も悪いんだよ、知っててずるずる付き合っちゃったから」
「ひまりが悪いところなんてひとっつもないから!全部向こうが悪い!」
私以上に怒ってくれる風夏ちゃん。
「石原って、そんなやつだっけ」
中学の時から旭君を知ってる菫ちゃんは、どこか納得がいっていない様子。
「無愛想で何考えてるか分かんないし私もそんな好きじゃないけど、ひまのことだけは特別って感じだったような気がする」
「そんなことないよ!中学に入ってからは学校じゃほとんど話してくれなくなっちゃったし…多分私のこと、鬱陶しいと思ってたんじゃないかなぁ」
「でもさぁ、友達に言われて仕方なく付き合ったなら、あんな風に教室まで迎えにきたりするかなってのはあるよね」
さっきまで怒ってた風夏ちゃんも、菫ちゃんの言葉に首を捻った。
「ていうかそもそも、そこから分かんないよね。石原って友達の言うこととか聞きそうにないじゃん。自分が嫌だと思うことは絶対しそうにないし」
「石原君そんなオーラあるよね。逆に友達を従わせてそうな」
「そうそう」
「アハハ」
客観的に見ると、旭君ってそんな感じなんだ。私はお隣さん+幼馴染み+好きな人フィルターかかってるから、どんな旭君でも魅力ポイントに変換されてしまう。
「私ね?」
「うん」
「やっぱりどうしても、旭君のこと好きなんだぁ」
どんなに考えても、モヤモヤしても、結局辿り着く答えはいつも一緒。
「小さい頃は、一緒にいて当たり前で。大きくなったら旭君に構ってもらえないことが寂しくて。だけどなんだかんだで構ってくれて、気付いてくれて、文句言いながら私のこと待ってくれる」
「「…」」
「偽物でも、旭君の彼女になれて嬉しかった。好きじゃなくても、旭君に手を繋いでもらえて嬉しかった。旭君がひまりって呼んでくれて私ホントに嬉しかった…っ」
涙って、不思議だ。何日もあんなに泣いたのに、まだ枯れてくれない。
「まだ好きなの、大好きなの!私どうしたらいい?あの時頷かなきゃよかった…もっと嫌がればよかった…旭君が私以外の子を好きになるなんて、絶対嫌……っ」
「ひま…っ」
「ひまり…」
「前は、幼馴染みの関係が壊れる位ならずっとこのままでいいって思ってた。でも今は、もう幼馴染みには戻りたくない。私、旭君の本当の彼女になりたいよぉ…っ」
「ひまりぃっ」
「わぁーん、風夏ちゃぁんっ」
また二人で抱き合って涙を流す。夜だから大きな声出したくなくて、必死に嗚咽を堪えた。
「…ちょっと、安心した」
いつも冷静で頼りになる菫ちゃんの瞳も、キラキラと光ってる。
「ひまがそこまで言えるなら、絶対大丈夫だよ」
「菫ちゃん…」
「アンタ昔から、石原には遠慮してたじゃん。話せるだけでいい、みたいな」
「そうかも…」
私自身も、正直驚いてる。
旭君にフラれた後も、お隣さんに戻れるならそれが一番いいことだってそう思ってたから。
だけど今は、そんな気持ちは一ミリも持ってないんだ。
「石原は、腹立つ」
「うん、腹立つね!」
「アハハ…」
「でもそんなこと、ひまが誰より分かってることでしょ?」
「え?」
「石原が、天邪鬼の嘘吐きだってこと」
「…」
「まだ、何も終わってないよひま」
「そうだよひまり!絶対何かあるって!このままモヤモヤするより、この際ハッキリさせちゃおう!」
「そう、だよね!どうせもうフラれちゃったんだから、これ以上マイナスなことなんてないよね!」
「頑張れひまり!」
「頑張るの石原だけどな。アイツマジで腹立つわー」
「菫、顔顔!」
「真相はっきり聞き出して、マジで悪ふざけで告ったって言うんなら一発ぶん殴っておいで、ひま」
「違う、三発!私らの分もお願いひまり!」
「うん、分かった!三発だね!任せて!」
「アハハッ」
もしも二人に相談してなかったら、このまま旭君と別れたまま話すこともなかったかもしれない。もっと嫌われたらと思うと、勇気が出せなかったかもしれない。
「菫ちゃん、風夏ちゃん、ありがとう」
「「頑張れ、ひまり」」
もう一度だけ、旭君と話をしよう。誤魔化さないで、教室で聞いた話もちゃんと。
旭君の口からちゃんと聞いて初めて、受け入れられる気がするから。
ひとしきり泣いて、それからはマシンガントーク。風夏ちゃんはずっと、私を庇ってくれた。
「私も悪いんだよ、知っててずるずる付き合っちゃったから」
「ひまりが悪いところなんてひとっつもないから!全部向こうが悪い!」
私以上に怒ってくれる風夏ちゃん。
「石原って、そんなやつだっけ」
中学の時から旭君を知ってる菫ちゃんは、どこか納得がいっていない様子。
「無愛想で何考えてるか分かんないし私もそんな好きじゃないけど、ひまのことだけは特別って感じだったような気がする」
「そんなことないよ!中学に入ってからは学校じゃほとんど話してくれなくなっちゃったし…多分私のこと、鬱陶しいと思ってたんじゃないかなぁ」
「でもさぁ、友達に言われて仕方なく付き合ったなら、あんな風に教室まで迎えにきたりするかなってのはあるよね」
さっきまで怒ってた風夏ちゃんも、菫ちゃんの言葉に首を捻った。
「ていうかそもそも、そこから分かんないよね。石原って友達の言うこととか聞きそうにないじゃん。自分が嫌だと思うことは絶対しそうにないし」
「石原君そんなオーラあるよね。逆に友達を従わせてそうな」
「そうそう」
「アハハ」
客観的に見ると、旭君ってそんな感じなんだ。私はお隣さん+幼馴染み+好きな人フィルターかかってるから、どんな旭君でも魅力ポイントに変換されてしまう。
「私ね?」
「うん」
「やっぱりどうしても、旭君のこと好きなんだぁ」
どんなに考えても、モヤモヤしても、結局辿り着く答えはいつも一緒。
「小さい頃は、一緒にいて当たり前で。大きくなったら旭君に構ってもらえないことが寂しくて。だけどなんだかんだで構ってくれて、気付いてくれて、文句言いながら私のこと待ってくれる」
「「…」」
「偽物でも、旭君の彼女になれて嬉しかった。好きじゃなくても、旭君に手を繋いでもらえて嬉しかった。旭君がひまりって呼んでくれて私ホントに嬉しかった…っ」
涙って、不思議だ。何日もあんなに泣いたのに、まだ枯れてくれない。
「まだ好きなの、大好きなの!私どうしたらいい?あの時頷かなきゃよかった…もっと嫌がればよかった…旭君が私以外の子を好きになるなんて、絶対嫌……っ」
「ひま…っ」
「ひまり…」
「前は、幼馴染みの関係が壊れる位ならずっとこのままでいいって思ってた。でも今は、もう幼馴染みには戻りたくない。私、旭君の本当の彼女になりたいよぉ…っ」
「ひまりぃっ」
「わぁーん、風夏ちゃぁんっ」
また二人で抱き合って涙を流す。夜だから大きな声出したくなくて、必死に嗚咽を堪えた。
「…ちょっと、安心した」
いつも冷静で頼りになる菫ちゃんの瞳も、キラキラと光ってる。
「ひまがそこまで言えるなら、絶対大丈夫だよ」
「菫ちゃん…」
「アンタ昔から、石原には遠慮してたじゃん。話せるだけでいい、みたいな」
「そうかも…」
私自身も、正直驚いてる。
旭君にフラれた後も、お隣さんに戻れるならそれが一番いいことだってそう思ってたから。
だけど今は、そんな気持ちは一ミリも持ってないんだ。
「石原は、腹立つ」
「うん、腹立つね!」
「アハハ…」
「でもそんなこと、ひまが誰より分かってることでしょ?」
「え?」
「石原が、天邪鬼の嘘吐きだってこと」
「…」
「まだ、何も終わってないよひま」
「そうだよひまり!絶対何かあるって!このままモヤモヤするより、この際ハッキリさせちゃおう!」
「そう、だよね!どうせもうフラれちゃったんだから、これ以上マイナスなことなんてないよね!」
「頑張れひまり!」
「頑張るの石原だけどな。アイツマジで腹立つわー」
「菫、顔顔!」
「真相はっきり聞き出して、マジで悪ふざけで告ったって言うんなら一発ぶん殴っておいで、ひま」
「違う、三発!私らの分もお願いひまり!」
「うん、分かった!三発だね!任せて!」
「アハハッ」
もしも二人に相談してなかったら、このまま旭君と別れたまま話すこともなかったかもしれない。もっと嫌われたらと思うと、勇気が出せなかったかもしれない。
「菫ちゃん、風夏ちゃん、ありがとう」
「「頑張れ、ひまり」」
もう一度だけ、旭君と話をしよう。誤魔化さないで、教室で聞いた話もちゃんと。
旭君の口からちゃんと聞いて初めて、受け入れられる気がするから。