嘘吐きな王子様は苦くて甘い
私が事情を話すと二人共顔を見合わせて、それからギュッと私を抱き締めた。

「もーひまり可愛すぎぃ!」

「く、苦しいよぉっ」

「あ、ごめんごめん!」

「ひま、石原と話せなくなっちゃったの?」

「何か顔見ただけで恥ずかしくなっちゃって…」

「えーでも好きって言い合ったんでしょ?」

「それはそうなんだけど…片思いしてた期間が長過ぎて、そっちの方が当たり前になっちゃってるっていうか…」

「つまり?」

「彼女って立場が物凄く…なんていうか、こう…うわぁぁって感じで」

「私にはちょっと意味分かんないかなぁ?」

「だ、だよね…」

苦笑いする私に、菫ちゃんがにやりと笑った。

「まぁいいんじゃない?今までの分、石原もちょっと位やきもきすれば」

「うーん、そうなのかな…」

「大丈夫だって!ひま、石原の前でおならしようと…」

「あーっ!それはもう言わないでっ!」

「アハハッ」

こうやって二人と話してると、気持ちが落ち着く。

旭君と一緒に登校してる時は心臓鳴りっぱなしで汗とか臭いとか気にしちゃって彼が何話してるのかも正直聞いてなかったし。

帰りも一緒に帰るのかと思うと、嬉しい反面少しだけ溜息を吐きたいような気持ちになってしまうのだった。








「大倉さんって、石原君と別れたんじゃなかったの!?今朝一緒にいるとこ見ちゃったんだなけど何で!?」

放課後になって、同じクラスの私とは違う目立つタイプの女子三人にそう話しかけられた。

「え、えっと…また付き合うことになって…」

菫ちゃんや風夏ちゃん以外と恋愛の話なんてしたことないし、普段あんまり話さない子達だから緊張してしまう。

「え、何で?」

「何でって…」

「そんなの、石原が告ったからに決まってんじゃん」

菫ちゃんが、横からそう答えた。

「石原君が?」

「えーそうなの?」

明らかに納得いっていないような雰囲気で、その子達は顔を見合わせてる。

あんまり話さないとはいえ嫌な子達だと思ったことはないし、こんな風に言われたのも初めてだ。

「ごめんね?変な意味じゃないんだけど、大倉さんと石原君ってイメージ沸かなくてさぁ」

「石原君が彼氏って何か大変そうだね」

「う、うーんどうかな…?」

「何かあったら相談乗るからね!」

「そうそう、嫌がらせとかされたりしたらいつでも言って!」

「あ、うん。ありがとう」

笑顔で去っていくその子達に、私も笑顔を返した。

「何あれ」

菫ちゃんが顔をしかめる。

「本気で相談乗る気なんかないでしょ絶対。すぐ広めそう」

「アハハ…」

「ひま、何かされたら言いなよ」

「うん、ありがとう」

「今日石原と帰るんでしょ?」

「う、うん」

「良かったじゃん。じゃあね」

「ありがとう、バイバイ」

…そうだよね、普通彼氏と帰れるなんて喜ばなきゃダメだよね。

こんな気持ちになってる私が、変なんだ。
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