嘘吐きな王子様は苦くて甘い

「だからってすぐミヤにアピールしたってこと！？」

「だ、だから違うってば！そうじゃなくて…」

「そういうことでしょ！？その時は別れてたからって今言ったじゃん！」

「いやそれは石原君と付き合ってるのにって言われたから答えただけで、そういう意味で言ったんじゃないよ！」

「ていうか大倉さん、そんな風に見えないのに石原君とも付き合ったり別れたりしてるの？」

前橋さんじゃない、後ろの女の子の一人がそう言った。

「え、えっと…」

「何で別れたのにまた付き合ってんの？」

「ん、んん？」

それは、前橋さんが私を呼び出して聞きたかったこととは関係ないような…

「もう、それは今はいいから！」

案の定、前橋さんが振り返って突っ込む。

「だって気になるじゃん！」

「私が気になってるのは違うことなの！」

「分かってるって」

「…」

「ごめんね、大倉さん」

「え？あ、うん」

前橋さんは律儀にも謝ってくれた。

「で、話を戻すけど。結局、大倉さんはミヤのことどう思ってるの？」

「いいクラスメイトだなって思ってるよ」

「ホントにそれだけ？」

「それだけ」

「でも、ミヤは大倉さん気にしてるみたいだけど」

「…そんなことないと思う。一ノ宮君は、ただ優しいだけだよ」

「じゃあ、何もなかったんだね？ミヤとは」

「…」

どうしよう。これって、何で答えたらいいんだろう。

告白されたなんてとても言える雰囲気じゃない、だけど嘘吐いたらまた後が大変になるかもしれないし…

「大倉さん？」

ハッキリ答えない私に前橋さんが眉間にシワを寄せた時、前橋さんと私以外の女の子達が騒つき始めて。その直後に、













「ひまり」

よく知ってる、低めの声が私の耳に響いた。

「あさ…い、石原く」

私が言い終わるより前に、旭君にグイッと腕を引かれた。

ポスッと旭君の胸に収まる形になって、慌てて体制を立て直す。

「おい、暴れんなひまり」

「ちょ、ちょっと！」

「いーから」

「で、でも！」

「うっせ」

旭君をよく見ると、少し息が上がってて。

もしかして、私を探してくれてた？

そう思ったら、こんな状況なのに思わず心臓がドキドキと高鳴ってしまった。