嘘吐きな王子様は苦くて甘い

第十四章「きっと伝わる」

ーー

「おはよー」

「ひま」

「ひまり！」

あの一件から二日経った朝。旭君に断りを入れて、今日は菫ちゃんと風夏ちゃんと待ち合わせして学校に行く。

「昨日はありがとうね！」

もうそこまで痛みはないんだけど、昨日は念の為一日学校を休んだ。放課後に二人が、ノートとプリントと私の好きなお菓子を持ってお見舞いに来てくれて凄く嬉しかった。

「もう大丈夫なの？」

「うん！」

「よかったね、ひま」

「えへへ」

二人は、私がいない間の様子を色々教えてくれた。クラスというより学年中、旭君達の話題で持ちきりだったらしい。

「ねぇ菫、これ言っていいのかな？」

風夏ちゃんが菫ちゃんにそんなことを言う。

「いいんじゃない？どうせ石原、自分じゃ何も言ってなさそうだし」

二人が一斉にこっちを見た。

「え、何？」

「昨日ね、石原君あの男子達と仲直りしたみたいだよ。石原君から折れたらしい」

「え、そうなの！？」

「ホラ、やっぱアイツ何も話してない」

「男子ってホント分かんないよね。取っ組み合いのケンカしてたかと思えば、もう仲直りしてるんだから」

「アハハ…」

「でね、菫がさぁ」

「あ、それ言わなくていい」

菫ちゃんが、風夏ちゃんの口を塞ぐ真似をした。

「何？気になるよ」

「菫がね？石原君に怒ってたよ」

「す、菫ちゃんが！？」

風夏ちゃんの言葉に、菫ちゃんが苦い顔をする。

「もう、言うなって言ったのに」

「ごめんごめん、だって菫カッコ良かったからさ！」

風夏ちゃんがカラカラと笑う。菫ちゃんも、言葉の割には大して気にしてなさそうだ。

「菫ちゃん、なんて言ったの？」

「ひまりの為を思うならちゃんとしろって」

「おぉ、確かにカッコいい！」

キラキラした瞳で菫ちゃんを見ると、彼女は少し恥ずかしそうに咳払いを一つした。








「石原はさ、ひまのこと悪く言ったアイツらにキレたんでしょ？」

「うん、旭君がそんな感じのこと言ってた」

「その気持ち分からなくはないけどさ、石原がずっとアイツらと険悪なままだったら、それをひまは気にするじゃん」

「…そうかも」

「だから、優先順位を考えろってね。余計なお世話だとは思ったんだけどさ」

「ううん、ありがとう菫ちゃん」

私が笑うと、菫ちゃんも柔らかい表情を見せてくれる。

「風夏、昨日も色んな人に言って回ってたよ。噂はデタラメだって」

「ありがとう、風夏ちゃん！」

「へへ」

頼りになる優しい友達が二人もいて、私は本当に幸せ者だと改めて思った。