嘘吐きな王子様は苦くて甘い
旭君に連れられてやってきたのは、公園だった。

「わぁ、綺麗」

海の見えるこの公園に、私は初めてきた。頬っぺたを突き刺すような寒さのことよりも先に、目の前の光景があまりに綺麗でそれに心を奪われる。

「夕日だ…」

「ギリ間に合ったな」

丁度、夕日の沈む少し前。遠くに見える高い建物の中へと飲み込まれて消えていく瞬間の、最後の光。

夕方の海辺は凄く寒かったけど、空気が澄んでいるのか今までに見たどの夕焼けよりも綺麗に輝いて見える。

薄暗い海に赤い光が反射して、キラキラと光る。

「凄いね…ホントに綺麗」

それしか言えなくて、ただジッとその景色を見つめる私。旭君は一言「だな」って呟いて、私の手をしっかりと握り直した。

「旭君、時間とか調べてくれたの?」

「大体だけどな」

「凄いね、ホントに綺麗だよ…」

「さっきから同じことしか言ってねぇな」

旭君は笑うけど、それ以外に言葉が出てこない位綺麗なんだから仕方ない。

「年明けからこんな景色見られるなんて、今年はいい年になりそうだなぁ」

「大袈裟」

「そんなことないよ、絶対そうだもん。だってこの景色を、旭君と見れてるんだよ?こんな幸せなことって他に…」

「ひまり」

旭君が私の名前を呼ぶ。反射的に旭君の方に顔を向けた瞬間旭君の顔がゆっくりと近付いてきて、











彼の唇と私の唇が、そっと触れ合った。

「大好き、ひまり」

「あ、あさひく」

「ずっと、好きだった」

「あ、あの…」

「多分、これからもずっと好きだから」

「っ」

ビックリして、恥ずかしくて、嬉しくて、でもどう反応したらいいのか分からなくて。

色んな感情がごちゃ混ぜになって、私の瞳から一筋涙が溢れた。

「お、おい何で泣いてんの」

「だって…」

「あ、あれか?外だったから?」

顔を赤くしながらも焦る旭君に、思わず笑みが溢れる。

「違うよ、嬉しいからだよ」

「…」

「こんな嬉しいことってないんだもん」

「ひまり」

「私も、旭君が大好きだよ」

泣きながら、笑う。

旭君が目を細めたと思ったら、彼の瞳にも小さく光るものを見つけて。

今度は私が、慌てふためく番になった。
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