黒翼の淡恋
ガチャ、キイ・・

カギが外され、扉の開く音が聞こえた。

もう食事の時間なのかと横たわっていた体を起こすと、目の前にはこの国の皇子・シリウスが立っていた。


「なんの変化もなかったらしいな」


「はい」


警備兵は深くお辞儀をしている。

シリウスの近くには側近のフォルトという更に目の細い男が立っていた。


「本気でございますか?シリウス様」


「さっきも言っただろう。二度も言わせるな」


「しかし・・皇帝陛下がなんとおっしゃるか」


「俺が決めた。誰にも口出しはさせん」


と口喧嘩の様に話しながら二人は彼女に近づく。


彼女は身を護る様に自分の体を抱きしめた。


_逃げられない。私はここで殺される・・。


貝の様にジッとした。

その彼女の髪に、シリウスはそっと触れた。


「漆黒の女。お前に選択させてやろう」


「・・え?」


「一つ目は、自由になり何処へでも好きな場所に行く。
二つ目は、この城に留まる。どちらか好きな方を選べ」


_自由に・・・?。



「私を殺さない・・の?」


「ああ。殺さない」


「自由に決めていいの?」


「ああ」


彼女は力の入らない足で一歩踏み出した。


_自由になれる?ここから出られる?


彼女の眼は生気を取り戻し、うれし涙を流した。

だが、それを眺めているシリウスは相も変わらず鋭かった。

故に何かあると彼女は悟った。

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