黒翼の淡恋
「記録書では、最後に見つかった黒髪の者は15年前。・・見つかり次第処刑だったから、
どんな生活をしていたのかははわからん。その次に発見されたのがお前だ」


「そう・・なんですか・・」


ティファは答える事も出来ない程のショックだった。

自分の祖先は悪事を働く一族とでも言うのか。と落胆した。


「もう一つ魔女として根拠としてあるものは『紋章』だ」


「!」


「この世界では国の紋章は数種類あるが、どれも皆国旗に使われている人間の作った物だ。
しかし、魔女は体の何処かに紋章を刻まれているらしい。魔法のような紋章だと書かれている」


「体に紋章が?」


「悪魔との契約で魔女は人を惑わし、弄び、殺し自分の糧とするそうだ。
幸いお前の体にはそれがなかった」


ほっ。
と安堵の息を吐いたのもつかの間だ。


「だが、見えていないだけで何処かで現れる可能性も否定できない」

「え・・」

「だから、お前には監視が必要なんだ。わかるか」

「・・・はい」



_そっか、そうだったんだ。だったら私が出来る事は・・。



「私は魔女じゃない。そう証明できればいいんですか」

「出来るのか?」

「・・あなたに害がないと、これから証明してみせます」

「期待している」


と意地悪く笑うシリウスに、フォルトはため息をついた。


_魔法の紋章だなんてお伽話。誰も信じていないというのに・・だから国で一番の変わり者って言われるんですよ。



「楽しんでますね・・シリウス様」

「何か言ったか?」

「いえ、何も。ですが、私はまだ反対です。もしもあなた様に何かあれば」

「それは俺から一本取ってから言え」

「う・・はい。」


シリウスは皇子だが、帝国一武芸が得意だった。

どんな鍛錬を積んだ兵士よりも強く、素早く動くことが出来る。

そしてそのシリウスを、ティファは平手打ちしたのだった。


_この女の平手を俺が交わすことが出来なかった。それから・・俺を打つとき目が一瞬紅く染まった様に見えた。
あれは魔術の類かもしれん。決して気のせいではない。


ずっと気になっていた事だった。

< 21 / 128 >

この作品をシェア

pagetop