黒翼の淡恋
シリウスはティファの長く艶のある髪を一束掴み指で遊んだ。


「洗ったらずいぶんと綺麗になったな」


「へ?」


_髪を洗った!?いつの間に!?


「地下牢にいたお前は最悪だった。顔も体も汚れ、髪もボロボロでな」


気を失って眠っている間、シリウスの専属の侍女達に全身をしっかりと磨かれた後だった。


「漆黒も磨けば輝く。城にいる以上は常に清潔でいろ」


「・・・はい・・えっと」


_この人をなんて呼んだらいいんだろう。皇子?殿下?



「好きに呼べ。ただ、あまり適当にするとそこのフォルトがキレるぞ」


「あ・・はい」




フォルトが不機嫌そうに細い目を更に細ませた。


「あなたは随分とイモ臭い匂いがしますし、私が徹底的にしつけてあげます」


「え¨・・いいです・・遠慮します」


「断る権利があると思いますか。私から見ればあなたは底辺の女。そんな者がシリウス様の近くにいるだけで、
そりゃあもう印象最悪なんです。わかります!?」


もはやキレている。


「う・・そんな事言われても・・」


「ただでさえ、あなたは黒髪なんです!しかも皇子の中でも変わり者だと評判のシリウス様があなたを傍に置くこと自体!!
シリウス派は反対なんですよ!?」


「今しれっと、言わなくていい事を言ったなフォルト」


という批難の声をもフォルトは無視した。


「とにかく、私が管理監視全てを担います。そしてシリウス様を裏切る行為をすれば即刻首を跳ねますから!!」


フォルトのつばが飛んでくるくらい顔がとてつもなく近いので、ティファは目をつむって耐えた。


_この人・・とてつもなく面倒くさそうううっ!!
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