黒翼の淡恋
彼女が目を閉じている間、男達は隅々まで体を確認した。

特に背中、太もも、うなじ、二の腕を確認するとすぐに彼女から手を離した。


「特に怪しい紋章はありません」


_紋章・・?


一人の兵士の声に彼女は眼を見開いた。


「今のところ、ただの少女にしか見えませんね。シリウス様」


「一旦は、な」


シリウスと呼ばれたその男は、自分の着ていた上着を脱ぐと彼女にかぶせた。


「あ・・の・・」


「何もわからないのなら現状だけ教えてやろう。お前には魔女の疑いがある」


「・・・ぇ?」


「この世界で、黒髪は闇に落ちた者を意味するのは覚えているか?」


「・・いえ・・」


_しらない・・そうなの?


「つまり、お前は人々に忌み嫌われる存在という事だ」


「そ・・んな・・」


彼女は首をもたげ、放心した。

記憶がさっぱり思い出せないからだ。
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