黒翼の淡恋
「それなんですけど」

ビクッ!!!


突然聞こえてきた声に3人の肩がすくんだ。

背後に弟セシルの姿があった。

「セシル、ノックもせずに入るな」


「すみません。でも今日はどうしても兄上と釣りに行きたくて」


「釣りなら他の誰かと行け」


「兄上がいいんです!今日は北の海に大物が来る予感がするから!」


と目を輝かせている。


「予感がするときになんで俺なんだよ、いつも」


「兄上は釣りに関しては強運の持ち主ですから!」


「気のせいだと思うが」


ため息をつくシリウスを見て、ティファは手で顔を隠してちょっとだけ笑った。


_なんかやりとりが面白い。



「あ、この子が噂の黒髪の乙女」


ドキン


目が合うと嫌な顔せずセシルはにっこりと笑顔を向けてくれた。


「初めまして。セシルです。シリウス兄上の弟です」


「あ、はじめ・・まして・・」


普通に挨拶をされたのでどぎまぎした。


「へえ、確かに黒髪だけど・・可愛い顔してるじゃないですか。兄上」


「顔?」


首を傾げるとシリウスの額にむきむきと怒りの筋を発見した。


_え?怒ってる。



「噂ばっかり尾ひれをつけてね、君の顔は今や超ド級ブスの設定だよ」


「え¨」



_巷ではそ、そんな事に・・。ショックすぎる。


ずん。

とティファの頭に重りが乗った。感じがした。



「でも可愛い。兄上の好みかもね」


「・・・・・へ?」


ゴゴゴゴゴゴゴ・・・


シリウスの怒りゲージが頂点に達しそうだ。


「おまえー、いい加減な事を言うな!出ていけ!!」


「きゃんっ」


背中を鷲掴みされ、廊下につまみ出されたセシルだった。

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