黒翼の淡恋
いつの間にかシリウスは近くに居なかった。

少し離れた場所で、部下が作った日よけのテントで酒をたしなんでいた。


「シリウス様いつの間にあちらへ・・」


ティファの近くで唸っているフォルトだ。


「フォルト、さんも行ってくればいいですよ」


というティファの優しい言葉に頷いてしまいそうになりながら、フォルトは首を横に振る。


「いいえ、これは監視です。あなたの」


「あ。そっか・・」



つい、釣りを楽しんでしまった。

監視と言われても別に逃げ出す訳でも、襲い掛かるつもりもないが。

いつの間にかティファの近くの桶には魚が大量だった。色とりどりの魚たちがコレクションされた。


そしてそれをセシルがニコニコしながら褒めてくれた。


「どうやら釣りは得意な様だね」


「いえ、初めてですし得意というわけでは・・魚が勝手に食いついてくるんですよ」


「はは・・その言葉、悪意を感じるなあ」


「え!そんな・・」


隣にいたセシルの桶を覗き込むと、二匹のみだった。

ニコニコは悔しさをやせ我慢しているからだ。

気まずくなり、俯くティファだ。


「釣られたいんでしょうね、君に」


「魚が?そんな事あるわけないですよ」


「フフ、どうかな」


意味深な笑いでセシルはシリウスを横目でチラ見した。


「折角だから兄上もやればいいのに」


「そうですよね」
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