黒翼の淡恋
と、その時だった。


「あ、おっきい・・え!?ちょっ!?」


ティファの竿に再び魚が食いついた。


「ちょっ!?フォルトさんっ!!」


かなりの大物が食いついてしまったらしい。

抵抗するが竿を引くことが出来ない。


「頑張れティファ!」


セシルは横で応援するのみ。手伝う気配はない。

そしてフォルトは。

まったく手を出そうとはしていなかった。

少し陰りのある顔で俯いていた。


_え!?どうして!?手伝ってくれない!!本当にこのままじゃ、海にひっぱられちゃう!


ティファは懸命に竿を引いたが、どんどん足が海の方に持っていかれる。


「ちょ・・誰か!フォルトさん!!シリウス皇子!!」


セシルも不思議に思いシリウスの方を見ると、口にグラスを当てながら様子を伺っているようだった。


「兄上・・?」


と、その瞬間ティファは波にさらわれた。


ザンッ!!


「ティファ!!!」


「がぼっ・・んぐっ・・シリ・・ス・・がぼっ」


溺れながらもシリウスの方に助けを求めるティファ。


_どうして?なんで?助けてくれないの???


恐怖と不安で支配される。

海の水を飲み、波で身動きが取れない。


_どうして__?
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