黒翼の淡恋
シリウスはワインを飲みながら聞いてきた。

「で?何か思い出せたのか?」

「・・え?」


_そういう事?危ない目に合わせれば何か記憶を思い出すかもしれないからって・・あんな事を??


脳裏によぎったのは誰かの声。男の人の声だった。

だけど「仇」という言葉が引っかかって、言いたくなかった。


「ううん・・特には・・」


「そうか。悪かったな。無駄に溺れさせて」


「シリウス皇子・・」


残念そうにワインを飲み干している。


_やっぱり言った方がいいのかな?言わなかったらどうなるの?でも・・怖い。
あの声が本当なら、私はこの手で誰かを殺さなくちゃならないんだ。


「兄上!悪かったなで済む問題ですか!?」


セシルが食って掛かった。

相当怒っている。

いや、酔っている。


「ティファは死にかけたんですよ!?その一言で片づけられる身にもなってください!!」


「お前、酒弱いんだから飲むな。誰だ飲ませた奴」


ジノンがセシルを取り押さえた。


「すみません。いつの間にか飲んでて・・手遅れでした」


「ちょ、話は終わってないんら」


「はいはいセシル様は奥のテントに一先ず行きましょうね」


「こらっ!ジノン放せっ!!兄上がそんな態度続けるならティファは私が貰い受けますから~」


「それは止めましょうホント」


引きずられながら奥へと連れて行かれた。奥の方でも元気な声が響いている。




「ったく、面倒くさい。いつもこうなるからあいつとは何処にも出かけたくなんだ」


「そ、そうだったんですね・・」


嫌がっていた理由はソレだったらしい。

お酒って怖い。と思ったティファだった。


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