黒翼の淡恋
扉が閉まり、彼女はその場でうずくまった。


「ぅ・・うぅ・・」


手をさすりながら、懸命に記憶を辿ろうとした。

ズキン

考えれば考えるほど、頭はより強く傷んだ。


「どうして・・」


壁の天井にある小さな窓から日の光が差し込んできて、部屋が少しだけ明るくなった。

その僅かな陽だまりのさなか。


「昨日・・夜・・私は・・私は・・・うぅ・・誰か・・神様・・」


泣きつかれて彼女はそのまま眠りについた。

自分には似つかわない大きな純白の上着を抱きしめて。


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