黒翼の淡恋
「そうだ。お前暇だろう?何かさせたいと思って書物や絵描き道具を用意した」


「え!?」


「これで気も紛れる。暫くはそれで遊んでいろ」


思いもよらないプレゼントだ。

突然寛大すぎる。

いや元々寛大なのかもしれないとティファは思い直す。

そもそも監視している人間に物をくれたり、優しく慰めてくれたりはしないハズだ。

嬉しくて思わず聞いてしまった。


「なんでそんなに優しくしてくれるんですか?」


「・・優しい?」


「だって・・私は魔女の疑いがあるからここに監禁されてるハズじゃ」


「そうだ・・・」


その沈黙はとても意味深だった。

シリウスの目がティファから逸れたからだ。


「これはただの気まぐれ。思い付きだ。それにこの前酷い目に合わせたからな。詫びだ」


と、濁す様に言った。

暇などないハズの皇子だ。政務も山ほど溜まっている。

それくらいはティファもわかっていた。


_何を隠してるんだろう。教えてくれてもいいのに。

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