性悪御曹司の仰せのままに
ーーーーと、その時だった。
背後から「園崎さん」と私を呼び止める声が聞こえて、振り向きながら足を止める。
「!」
そんな私の目に入ったのは、朗らかに笑う社長の姿だった。
咄嗟のことに驚きながらも、なんとか落ち着きを取り戻し、急いで言葉を紡いだ。
「社長、おはようございます!どうかなさいましたか?」
「おはよう。すまないね、急に」
普段、社員とあまり会話をしているところを見かけたことがないから、珍しいこともあるものだと思いながら、いえいえと首を横に振る。
「園崎さんじゃないとダメってこともないんだけど…ちょうど、目の前を歩いていたから」
そう言ってなんだか申し訳なさそうに頭をかいたあと、社長はまたおもむろに口を開いた。
「今日、僕の息子が日本に帰ってくるんだけど、その息子の教育係を園崎さんにお願いしたいなと…」
「……へ、っ?」
急なお願いごとすぎて、体が固まる。
私が……性悪御曹司の教育係を……?
え、いや、え、嘘でしょ……。
マイナスな妄想ばかりが脳みそを満たして、なかなか社長に言葉を返すことが出来ない。
だって、本当に急なんだもの。
というか一言で言うと、荷が重すぎる……!