夢の中だけでも、その温度に触れたい。



気持ちは積もるばかりで、そのくせ会って想いが強くなるのを恐れている。
今抱いているこの想いでさえ、私の手には負えないのに。

こんな気持ち、これ以上に募ってしまうようなことがあるのならば、なんて。壊れてしまう自分が安易に想像できるから。


「私が蓮太郎さんみたいになっちゃったら、みんなに距離置かれちゃうかな」
「お前の話を聞く限り、まあまあなダメ人間だしね」
「ダメ人間って言わないでよ」
「じゃあまず否定しろよな」


お酒が好きだけど、大勢がいる場所ではニ杯ほど飲んだだけで帰りたくなってしまう。

けれど悪酔いした店長に絡まれて満更でもなさそうに話し相手になってあげるから、いつも終電には間に合わなくて朝方の始発を待つ羽目になる。


たまに「ゆきちゃん何連勤? 疲れてるでしょ、甘いものあげるよ」なんて理由で私に差し出してくれるチョコレートが毎回パチンコの景品だというところも。

女の人と立てた予定よりもつい趣味の釣りを優先してしまうところも、そこに悪びれないところも。

人が想いを込めて渡したお菓子の消費期限をうっかり切らしてしまう無慈悲なところも。

給料日から1週間ほどで金欠だと焦り始めるくらいにお金の使い方がだらしないところも、けれど煙草の本数だけは減らさないところも。

稼ぐつもりでパチンコに通うところも、目上の人に対して使う敬語が下手くそなころも、それでいて乾杯する時にはいつもジョッキを下から掲げるところも。私はもうずっと、好きでいる。
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