「 」
「いただきます」
ぱた、と手を合わせて軽く頭を下げる。
私の目の前には薄く湯気を立てて佇む1枚の皿と1つのお茶碗。
まあ、足りるか。
足りなければ先程覗いた冷蔵庫に珍しい桃のヨーグルトでもあったから、それを食べたら良いだろう。
カチャ、という箸と皿がぶつかり合う音をたてて豚肉とキャベツをつまんだ。
ほろほろと崩れる具材の山がまた良い。
食欲を掻き立てる。
お茶碗片手に一口含めば広がるソースの味。
その後に白米を一口食べたら。
ふふ、美味しい。
やはり、どんな時であれどご飯を食べると嬉しくなる。
しかし、これくらいなら作れるな。
余裕。
最近は料理なんてものをしていなかったから、また再開してもいいかもしれない。
明日の帰り、何か買って帰ろう。
振る舞う人は、いないけれど。
美味しい、って言うのは私だけだけれど。
食卓を囲むのが一人なのはもう何年も変わらない。
「美味しいね」って言う相手も、「美味しいよ」って言う相手もいない。
…そんなこと、もう慣れた癖に何言ってんだか。
だけど、なんだか、なんだか今日は虚しい。
それがよく分からなくて、可笑く思えて、私は湯気がほとんど消えてしまったご飯をまた、口へと運んだ。