「    」

「さようなら」

廊下ですれ違う先生にそう声をかけて門を出る。
皆部活で、帰る人が少ない午後5時頃。
ざあっと音をたてて揺れる木々がその寂しさを更に引き立てた。

いつもの駅で電車を待って、いつもの駅で電車から降りる。
いつもと変わらない日。
いつもと同じ日。
それなのに何故か。



家に帰りたくない。

そう思った。


家に帰ってもどうせ一人。
一日くらい家に帰らなくたって何も変わらないだろう。
運がいいのか、明日は日曜日。
学校も休みなのだから良いでしょう?
そう決めて、家へと帰る道とは反対方向の道に進んだ。


もう午後の6時半。
夜ご飯としてMの文字が特徴的なハンバーガーチェーン店でセットを頼む。
食後はそこで少しだけ課題を進めていたが、店員さんにちょっと…と注意をされてしまったため、仕方なく外へと出てきた。

家へ帰らない、と思っても特に私に行く宛などない。
なんとも見切り発車な。
でも、今引き返すのも違うような気がする。
近所の公園にでも行ってみるか、と足を動かした。


あと9日で閉店するという張り紙を出したお世辞にも美味いと言えなかったクッキーの店を通り過ぎて、コインランドリーの角を曲がれば、ブランコとすべり台とベンチのみの質素な公園が姿を現す。

ふらっと何も考えずにブランコにぎぃっと音をたてて座る。
地面に足をつけても腰より高さが上の膝。
ああ、もう子供じゃないんだと思い知らされた。
それでも、なんとなくブランコを漕いでみれば、さあっと耳の横を通り過ぎる夜の風。






何してるんだろうね。



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