独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 時間を惜しむように何度も肌を重ね、ギリギリまでベッドの上で過ごしたせいで慌ただしく足を運んだ実家。長年住み続けた家なのに、どこか違った顔を見せる。

「予定より遅い時間になったな」

 しれっと言う海斗さんに、思わず苦情をもらす。
 のんきに隣で眠った私にお灸を据えたかったとしても、さすがに度が過ぎている。

「どなたのせいだと……。お陰で久しぶりに父に会う緊張感を味わう暇も……。え?」

 もしかして、そのために?

 今さらながら気付く『もしかして』の想像に目を丸くする。

「由莉奈が可愛いから悪い」

 うそぶく海斗さんの横顔を、穴が開くほどに見つめる。

 そうだよ。そうに決まってる。
 海斗さんは私のために、時には悪役にもなってくれるんだ。

「ありがとうございます」

 胸が熱くなって、そう言っても「本当に可愛いからだよ」と、敢えて文字通りの会話をするのが、海斗さんらしい。
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