独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
にこやかな母に出迎えられ、父の待つ客間に向かう。
座布団にあぐらをかき、難しい顔つきの父に海斗さんは入り口で正座をして頭を下げる。
「挨拶が遅くなり、申し訳ありません」
私も海斗さんに倣い、隣で三つ指をつき頭を下げる。
「堅苦しい挨拶はいい。座りなさい」
促され、座布団まで進み出る。
父の正面まで進み、海斗さんが父と向き合う形で座り、私も腰を下ろす。
「今日は、由莉奈さんとのお付き合いをお許しいただくために、伺いました」
迷いのない真っ直ぐな声。
改めて『お付き合い』と父に宣言されると、身が引き締まる感じがする。
「由莉奈が、染谷くんと暮らすと言ったんだ。そうすればいい」
にこりともせずに淡々と言う父。やはり報告に来る必要なんてなかった。父は私のことなんて……。
「正直に言われたらどうでしょう。染谷くんみたいな男に娘を渡したくないと」
一瞬、眉が僅かに動いた気がしたけれど、それもほんの瞬きの間。やはり父は、なにも言わない。