独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
私は居た堪れなくなり、海斗さんを制止する。
「もういいんです。海斗さん」
声を絞り出し、肩を揺らす。座卓の下、父に見えない位置で手を握られた。まるで『大丈夫だから』と言うように。
「由莉奈は、俺とでは『普通の幸せ』は望めないかもしれない」
手を握られた温もりと、声の低さが混ざり合い、胸が締め付けられる。
海斗さんの言葉を受け、父は深くため息を吐く。
「だから染谷くんは駄目だと言ったんだ」
私は言われていない。それは海斗さんとのやり取りでの発言だろう。私には縁談を持ちかけておいて、ひどい言い草だ。
「私は、染谷さんでなければ嫌です」
父の目を見据え、初めてかもしれない。こんなにハッキリ、自分の意見を言うのは。
父は片手でこめかみを押さえ、頭を振る。
「由莉奈は世間知らずだから、染谷くんのような男がよく見えるだけだ」
どうしてそんな……。
「染谷さんのお人柄は、お父様がよくご存じのはずです」