独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 私の変化を感じ取ったのか、父は悠然とした態度でチクリと指摘する。

「私の了承を得るよりも先に、由莉奈の気持ちを結婚に向けさせるのが先だろう」

「ハハハ」と乾いた笑い声を上げ、海斗さんは悪い顔をして言う。

「もちろんです。今、俺から離れられないように仕組ん……いえ、由莉奈が安心して俺との結婚を考えられるまで、ゆっくり待ちますよ」

 今、小さかったけれど、聞いちゃいけない心の声が聞こえた気がする。

 父に全て聞こえたのか定かじゃないけれど、肩を竦め「やれやれ」とため息を吐く。

「だから染谷くんは、鼻持ちならないのだよ。由莉奈。染谷くんに見染められたが最後だと思っておきなさい。実に狡猾で、手に入れると決めたものは、必ず手中に収める」

「あ、あの。海斗さん?」

 おずおずとお伺いを立てても、心を読めない笑みを浮かべるだけ。そして、手も先ほどから握られたまま離してくれない。

 私、海斗さんから離れられないように、なにか仕組まれているの?

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