独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
クスクスと笑いながら、前を向く前に耳を舐める悪戯も忘れない。「ひゃあ」と悲鳴をあげると、ますます楽しそうで、耳を押さえたまま仏頂面で口を噤む。
「今日の夕食、なにか食べたいものは?」
この流れで聞かれて、素直になれるわけがない。
「私が作ります」
意外だったのか、感心したように言う。
「それはそれは。俺が胃袋をつかまれちゃうかな」
「逆に胃薬が必要かもしれないですよ」
「プハッ」と吹き出した海斗さんは、目に涙まで浮かべている。
「由莉奈に殺されるのなら本望だ」
「物騒なこと言わないでください」
もうたぶん、海斗さんから逃れるのなんて、絶対に無理だ。
こんな会話にさえも、幸せを感じているのだから。
夕食は海斗さんみたいなお洒落な料理ではなく、地味な和食しか作れないのに、「美味しい」と食べてくれた。