独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
誇れる自分とは

 この日から愛されて、海斗さんの腕の中で眠る。

 目眩がするような甘い日々を過ごし、どうしてそんなに頑なに海斗さんとの結婚を拒んでいるのか、自分でもわからなくなってくる。

 ただ、海斗さんからも改めて「俺と結婚しよう」とは言われないから、恋人と暮らしているという形でとりあえず落ち着いている。

 翼さんには、あの日以来「婚約者を心配させないように早く帰りなさい」と言われるようになってしまった。

 周りに言いふらすような人ではないから、ほかの人がいないときにしか言われないけれど、変に気を使わせてしまって申し訳ない気持ちになる。

 ただ、あのときみたいにイレギュラーな出来事がない限りは早めに帰れるため、問題なく過ごしている。

 そんな日々が数日経ったある日、リチャードさんから再びメールが届いた。

「10名くらいのお茶会なら、川瀬で頼めますか。ですって! 翼さん! 10名分の和菓子なら、うちでも用意できますよね!」

 あまりにも弾んで言ったものだから、翼さんは微笑んで答える。

「これであの晩の婚約者にも認められるね」

「それは……」

 認められたい人物が、海斗さんだとは話していないのに。
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