独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「本心は千人でも受けたかった。そうだろう?」
「それは、そうですけど……」
それだけ大人数の人に、和菓子を食べてもらえるかもしれない。そう思うと胸が弾むのは事実。しかし、自分の力が及ばないのはわかっている。
「今回、もどかしく思った部分があったね。ないのなら、それを作ればいいんじゃないかな」
「作る?」
「リチャードはコンサル業務が仕事だ。俺と同じ思いだったよ。今の川瀬で無理ならば、由莉奈がやればいい」
真っ直ぐに見つめられ、言葉に窮する。
「私が、ですか?」
「人を募って由莉奈が教えるんだ。マナーも、対応も、語学も。和菓子の良さを広めるために」
『和菓子の良さを広めるために』
それは私が夢に描いていた、和菓子に携わり、食べてくれる人の笑顔を見るというものよりも、もっと叶えてみたいと思える素晴らしい役割。
けれど、考えてもいなかった道筋を示され躊躇する。