独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
翌日出勤すると店長に呼び出され、プレビアス社から正式な依頼が入っていると聞かされる。
もう後戻りできない。
覚悟を決め経緯を話し、店長には川瀬の和菓子を納品する点や、販売員として出向く旨の了承を得る。
「ええ、リチャードさんからも伺いましたよ。由莉奈ちゃんが窓口になって、お茶会の段取りも話し合うって」
年配の優しい店長。この前、『孫が生まれておばあちゃんになったのよ』と、微笑んでいた。物腰の柔らかい、まさに和菓子みたいな人。
「販売員の枠に捉われず、そういうお仕事が出来るんじゃないかしら。リチャードさんも勧めていたわよ」
「えっと、そうですね」
穏やかに言われ、曖昧な笑みを浮かべる。
「そうなっても川瀬として、出来る限りの応援はさせてもらうわね」
「はいっ。ありがとうございます」
リチャードさんが進めたい方向に、根回しされている気がしないでもないけれど、海斗さんのせいだと目くじらを立てる気持ちはもうない。