独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
数週間の間、奔走し、どうにか形になりそうだと思えた頃、「気分転換に食事しに行かないか」と海斗さんに誘われた。
「ちょっといいところを予約したんだ。ドレスアップして行こう」
「私、普段着以外は全て実家に……」
一応は社長令嬢。あまり参加はしないものの、それこそパーティー用のドレスも持ってはいる。品のいいレストランなら、落ち着いたワンピースがいいかもしれない。
「それくらいプレゼントさせて。ここ最近、ずっと頑張っている由莉奈に、ご褒美として」
「でも……」
頑張っている自分を、自分で褒めてあげたいくらいではある。けれどそれ以上に、海斗さんに負担を強いている。
和菓子が好きと豪語しておいて、勉強不足を痛感していて。帰ってきてからも、調べ物や問い合わせにと時間が足りないと思うほど。
その分の家事を、海斗さんが担ってくれている。
申し訳ないと思いつつ、『今、頑張りたいときだろう? 思うままやればいい』と応援してくれる。
海斗さんの、それからもちろんリチャードさんの思いに応えたい。
「男の申し出は素直に受け取っておくのが、レディの嗜みじゃないかな」
手を差し出され、さながらお姫様気分。石垣島のひとときを思い出し、自然と心が弾み笑みがあふれた。