独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 デート気分を出すためにマンション前で待ち合わせをしようと言われ、準備をしてから向かう。

 降りていくと、高級車が既に停まっていて……。

 車の脇に立っている海斗さんに、目を奪われる。グレー寄りのブラウンの落ち着いたスーツに、明るめのネクタイとキャメル色の革靴が華やかさをプラスする。

 お見合いの席ではシックな紺色のスリーピースで、そのときとはまた違った装い。

「どうしたの? もしかして見惚れてくれている?」

「それは、はい」

「今まで、あまり態度に表してくれなかったのにね」

 石垣島ではこっそり見惚れていたし、お見合いの席ではそれどころではなかった。普段もスーツ姿だけれど、今はどことなく甘さが漂う。

「ドレスアップする由莉奈の隣に立たなきゃいけないから。男前度を上げておかなきゃ」

 上げる前から完敗なのに、どうすればいいの。

 改めて手が差し出され、応えた手が微かに震える。

「あんまり可愛らしいと、マンションに舞い戻る羽目になるよ。誰にも見せずに、閉じ込めておきたくなる」

 妖しい眼差しを向けられ、肩を揺らす。

「さあ。そうなる前に行こうか」
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