独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
連れられたブティックは、高級感漂うお店。入店するだけで背筋が伸びる。
海斗さんは慣れた様子で、数点のドレスを試着させてもらえるようにお願いしている。
「由莉奈も気になるドレスがあれば、言って」
華やかなドレスに囲まれ、目移りするし、なにより海斗さんが選んだドレスはどれも私には大人っぽいのではないかな。と思うデザインばかりで気が引けてしまう。
まずは深いエメラルドグリーンが美しいドレスを着て、海斗さんの前に歩み出る。
光を受けると艶めく生地が、妖艶な女性を演出する。
「どう、ですか?」
まじまじと見つめていた海斗さんが、片手で口元を覆う。
「すごく似合っていて、言葉を失っていたよ。うん。すごく綺麗だ」
臆面もなく褒める海斗さんを、恨めしく思う。お陰でこちらは、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「ただ、うん。これはやめておこう」
「やっぱり、私には背伸びしている感じですよね」
色気ある大人の女性という雰囲気が、気後するデザイン。
「いや、似合い過ぎていて、心配になる。こんな格好で歩いていたら、ほかの男の目が気になって食事に集中できないよ」
真面目な顔をして言うものだから、怖くて店員さんの顔を見られない。