独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
参加者より先に会場に出向き、準備や最終チェックに追われていると、リチャードさんが現れて挨拶を交わす。
〈由莉奈。おはよう。今日を無事に迎えられて、嬉しいよ。由莉奈も楽しんで〉
〈ありがとうございます。精一杯、販売員として務めさせていただきますね〉
会場には、パーティーの参加者が徐々にやってきて、華やかな雰囲気が伝わってくる。
「ねえ。これ捨てておいてくれないかしら」
すれ違った人になにかを入れていた袋を差し出され、顔を向ける。入り口で配られた記念品の包み紙だろうか。ホテルの従業員と間違えられたようだ。
「はい。かしこまりました」
捨てておくだけならと、受け取ろうとすると声が明るく大きくなる。
「あれ。やだ。古屋さんじゃない?」
母の旧姓で私を呼ぶ女性に焦点を合わせると、そこにはドレスアップした早坂さんが立っていた。早坂さんは専務の娘であり、そして……。
「仁美。行こう」
名前も思い出したくない私の婚約者。ううん。元婚約者だ。
ふたりは腕を組み、寄り添っている腰には腕が回されている。